過去に分析依頼を頂いた企業の一つにJACリクルートメント(2124)という人材紹介会社があります。この株はリーマンショック後に凄まじく伸びた銘柄の一つで2009年には30円程度だった株が1500円以上になっています(50倍以上)。興味深い株なので少しだけ過去を遡って考えたいと思います。
リーマンショックで大赤字に
人材業界は不景気になると急激に業績が悪化する業界です。グラフの通りリーマンショック後(2009年)に売上は突然半分になり、営業利益10%の優良企業が一転して大赤字になり、資本を喰い潰していきました。倒産が迫ってくる様子を見て、株主たちはババ抜きでもするように株を叩き売りあいます。これが株価30円の状況です。
当時のことをご記憶の方はこの頃の人材紹介業界に何があったか覚えているかもしれません。人材紹介業は一般に「年収の3割」を企業側から成功報酬として受け取ります。例えば年収700万円なら210万円が成功報酬でなかなかいい値段です。リーマンショック時はどの企業も売上が2割ぐらいは減るような状況で、各企業が真っ先に経費節減の対象にしたのが中途採用の停止です。採用は開発等とは違い先行投資があるわけでもありませんから停止も簡単です。こうして日本中の企業が一斉に中途採用を停止したことで、
JACは売上半減という憂き目に合うわけです。
JAC内でのリストラ
売上が半分になったらJACはコスト削減を行うしかありません。しかしJACのコスト削減は他企業に比べると意外と簡単です。なぜなら人材紹介業にとってのコストはほとんどスタッフの人件費で固定費らしいものはほとんどないからです。売上が半分にならスタッフを半分にすればコストは安定します。社員の解雇が簡単だというつもりは全くありませんが、単純に言えば退職金を割増できる体力さえあれば、態勢を整えることができるわけです。実際に
JACは2010年には態勢を整えています。
そして景気が反転
スタッフ数の圧縮を行った中で景気が反転し始めJACに春がやって来ます。スタッフは少ない中で求人が増え、利益率も改善しながら売上が伸びる理想的な成長が始まります。株価はしばらく伸びませんでしたが、アベノミクスと共に倒産の懸念は忘れ去られ株価は伸び続けます。さらに最近は就業人口の減少に伴い景気以上に人材紹介市場は活況となり高成長が続いています。こうして50倍株が誕生したのです。
というわけで、シクリカル銘柄は基本的に苦手なのですが、次にリーマンショック級のクラッシュがあった時はこの人材業界に注目しようと思っています。
はじめまして。
いつも楽しく拝見しております。
非常に興味深い記事ですね。
コメントが無いのが不思議でした(^^;
お金持ちになるには、やはりこのような◯◯ショックを待つのが実は一番の近道なのですかね。
最近は特に、株価が高値圏にあるような気がしており、現在の保有株を利確するべきか真剣に悩んでおります。
私の認識では、すぽさんは景気の先読みはしないというスタンスですので、そのような悩みはないのでしょうかね。
(ピーターリンチ氏なども、そのようなスタンスですかね)
株を持たないことの機会損失と、暴落への備え(暴落時にたっぷり買い込むための資金)のバランスには、いつも悩まされております。
例えば、現在の資産が目標とする資産額到達まであと10%なら、大暴落を待つのは非効率的ですよね。
しかし、資産が3倍になる必要がある場合には、一概に非効率的とは言えないような気もします。
今後も、ブログの更新を楽しみにしております。