前回のエントリは一話完結のつもり書いたのですが、もう少し深く考えてみるのも面白そうなので続編です。
なぜ「お金の入り口に目を向ける」のか
「お金の入り口に目を向ける」と、なぜビジネスモデルが見えてくるのでしょうか。それは、お客さんが支払ってもよいと思っている金額と、実際に支払う(支払った)金額には、想像以上に大きな開きがあり、ちょっとした価格の変化によって、企業(の利益)は天国と地獄ほどの違いが生まれるからです。引き続きアサンテの例で考えてみます。
3つの金額
まずあらためて、以下の3つの金額を考えてみたいと思います。
①実際の価格
②企業がかけたコスト
③お客さんが払えた最大金額
まず「①実際の価格」です。これは前回の例の通り、20万円(25坪×8,000円)とします。
次に①のときの「②企業のかけたコスト」はどうなるでしょうか。これは営業利益率が15%程度ということから逆算します。コスト(原価、SGA、R&D合計)は、17万4千円程度で、残りの2万6千円ほどが(営業)利益だったということです。
では、最後に「③お客さんが払えた最大金額」です。ここはよく考えてみる必要があります。22万円ですか、30万円ですか。
もちろん人によって違うものですが、おそらく多くの人が100万円ぐらいまでは支払うというのが私の感覚です。根拠はリフォーム詐欺です。リフォーム詐欺では、不安を煽ったり相場は200万円だなどと言っては値段を跳ね上がらせますが、お客さんにごねられないようにするために、概ね100万円以内にするそうです。
人は自分の家の一大事だと感じれば、100万円ぐらいまでは支払う気になるのです。
図では、別の例についても考えました。40型液晶テレビはつい最近まで1インチ1万円が相場だと言われて支払っていたことから最大額を決めました。MSオフィスはほぼ独占なので、MSが概ね最高価格をつけていると考えました。参考:ビジネスモデル:マイクロソフトのWindowsやOfficeの利益率
水1リットルは、山のぼりや震災時の水道水が飲めなかったパニック時などを考えれば想像できます。本当はもう少し高くても支払うかもしれません。
気づいてほしいのは、世の中のたいていの商品において、②と③の幅(レンジ)は極めて広く、多くの場合で最高の価格がつけられれば営業利益は9割ちかくになるということです。
お客さんは企業側の事情に興味が無い
こんなに広いレンジの中で価格が決定するわけですが、一方で「お客さんは、企業側の事情に興味が無い」ことも、面白いポイントです。
お客さんは、企業が赤字だろうか、営業利益率9割だろうがあまり興味がありません。ただ、他のものを比較しながら一番よいものを安く買おうとするだけです。言い換えると「お客さんはレンジのどこで支払おうが満足」なのです。
ビジネスモデルの役割
で、ビジネスモデルの役割をあらためて考えてみます。ビジネスモデルの役割とは、要するにこのレンジのどこで価格を決定させるかということです。ビジネスモデルがない企業は、価格競争によって価格はコストに張り付きます。つまり営業利益率ゼロ、もしくは赤字です。液晶テレビがこれです。
アサンテの場合、お客さんが、信頼のある企業のサービスを受けたいと思うため「多少高くても」支払ってくれます。このちょっとした差・心の機微が、営業利益率15%を生んでいるのです。
というわけで、なぜ「お金の入り口に目を向ける」のか。それは、お客さんは(実は)いくらでも満足なのに、企業にとっては企業存続の生命線になってしまうのが「値段」であり、そこを注意深く見ることで、「企業のお金のもらい方≒ビジネスモデル」がみえてくるからです。
こんばんは。
すぽさんのエントリーを読んでいると、
自分も定性分析が出来るような気がしてくるのですが、
実際に自分の頭で考えながら分析しないと出来るようにならないですよね。
自分なりに学びを深めようとしているのですが、
すぽさんが4.0以上の投資適格にする銘柄と
自分のそれとが一致することはまずありません。
ところで、6058ベクトルについては如何思われますか?
指標的には割高ですが、企業のテレビCM費削減というメガトレンドがあり、
市場環境は良いと思いますが。
テレビCM→ネット広告の広告業界の変容を追い風とする会社であり、
東南アジアに進出する企業の橋渡し役をするという意味で、
3660アイスタイルと似ていると思います。