中期投資と長期投資の違い

ライザップの議論後にジントニックさんから「中期投資と長期投資の違いをまとめて欲しい」というリクエストを頂きました。面白いテーマだなぁと思いしばらく考えていて、やっとある程度整理ができてきたので現時点での考え方をまとめてみます。

  • 中期投資(23年)の基本スタンスは「変化の先取り」
  • 長期投資(35年)の基本スタンスは「環境の理解」

中期投資は「変化の先取り」
中期投資は23年を投資期間とする投資方法です(と定義します)。この中期投資を考えた場合、最も重要になるのは「現状の理解」と「次へのつながり」ではないでしょうか。現在の分析をしっかり行い、変化点に着目する。そしてその変化点の理由を明らかにして、次の23年の業績を予測する。こんなアプローチです。そして中期投資の利益の源泉は「変化の先取り」になると思います。

長期投資は「環境の理解」
一方、35年を投資期間とする長期投資の場合、何よりも重要になるのは「環境の理解」です。市場のニーズは溢れているか、競争環境はどう変化し得るか(過当競争にならないか)、35年を考えて多少の変化があっても何とかなるという理由を探すアプローチになります。

そして長期投資の利益の源泉は「企業の安定性の理解の差」になりそうです。(株価が2~3年程度しか読まないなら、5年を読めればその差が利益になる)

こう整理してみると、今回「評価なし」となった理由、お互いの捉え方の違いも理解できてきそうです。

中期+長期=中長期投資
この整理がついたことで私の投資スタイルは中長期投資とは言いつつも、中期よりも長期に寄っていることに気づきました。財務分析はさらっとしか行わず、ビジネスモデルの理解に多くのエネルギーを注ぎ、投資判断を下しています。

しかし、中期の先に長期があるのですから、中長期投資は両面の理解を進めた方が強固になりますし、ライザップの議論では図らずもまさにこの両面を確認できたのではないでしょうか。

というわけで、今後も楽しい議論をお願いしますね。

『中期投資と長期投資の違い』へのコメント

  1. 名前:Ganan 投稿日:2017/05/17(水) 23:23:00 ID:152a9f40c 返信

    すぽさん、
    さすがですね。良くまとまっていらっしゃいます。
    私はビジネスモデルにエネルギーを使うよりも現在財務的に割安かどうかで判断することが多くて、やはり中長期投資の中期寄りです。
    今回の議論を通じてそのことが分かって、自分の成長につながりました。
    今まで割高ではないから購入を見送っていた銘柄を購入して(ビジネスモデル、長期を意識したら割安と判断し)、おかげさまで、まだ短期的ですが成果につながりました(パピレスという銘柄です)。
    また今後も宜しくお願いします。

  2. 名前:トカゲ 投稿日:2017/05/18(木) 01:46:18 ID:c3d7560fd 返信

    すぽさんこんばんは。
    中期投資と長期投資。
    漠然と耳にすることはありましたが、その差に大したものは無いと思っていました。
    実際、中期投資や長期投資と発する人も深くその差をイメージしながら言っているかは疑問です。
    ライザップの議論で、投資家の銘柄を評価する基準が、キャピタルゲインを得るまでの想定期間の違いに関係している可能性がありそうだと自分なりに解釈することが出来ました。
    現在から1年後に売却した場合に株価が上昇する銘柄を選定するという場合と
    5年後に売却した場合に株価が上昇する銘柄を選定すると条件をつけて銘柄を選定した場合、
    1年後に株価が上昇する銘柄を狙う場合だと財務内容の分析と短期的な成長度合いが重要になると思います。市場環境の変化リスクは投資期間が短いほど顕在化する確率が低くなるため、重要度は低くなると思います。
    5年後の上昇を狙う場合は逆に足元の財務内容や短期的な成長度合いよりもビジネスの競合障壁の高さや長期的な市場環境の安定性等が重要視されると思うので
    同じ銘柄の評価をした場合でも、投資期間により、そもそもの採点項目が違うため、
    同じ銘柄を分析しても違った評価になるのだと理解できました。
    参加して大変勉強になりました。
    自分もこれはと思う銘柄が見つかったら、
    すぽさんに銘柄分析をお願いしたいと思ってますので宜しくお願い致します。

  3. 名前:ジントニック 投稿日:2017/05/18(木) 06:51:04 ID:004a77a2b 返信

    まずは記事でまとめていただき、ありがとうございます。
    読んだ感想としては分かるような分からないような、という気持ちがあります。
    (誤解しているかもしれない)
    両者の差異としては、「変化して欲しい」のか「変化して欲しくない」のがポイントなのですかね。
    中期では兆しを見つけて、今後変化するだろうと予測する。
    長期では現環境が変化しにくく、現時点の成長ペースが維持すると予測する。
    この目線をライザップを見ると、今の売上・利益成長率が高すぎるため、これを維持すると見込むのは長期投資では難しいのかもしれないですね。

  4. 名前:インコ 投稿日:2017/05/18(木) 11:45:30 ID:386972eba 返信

    いつも拝見して参考にさせて頂いています。私は上記の定義であるなら、超長期投資でしょうか。5〜10年を想定しているのですが、そうしますと確かなのは人口動態で、例えば10年後は、今よりも高齢者が増え、労働力が減少した社会になっています。医療、介護、健康といった銘柄が有望でしょうし、人材関連もよいと思います。
    その中で企業は生き物ですから、ビジネスモデルは陳腐化しても、優れた経営者は必ず次の一手を打ってきます。つまり有望な業界の中の優れた経営者が率いる企業でしょうか。
    出始めの頃の柳井さんや孫さんや三木谷さんを発見できた人は今は大金持ちでしょう。私はオーナー経営者に近い所で経営企画的な業務に従事してましたので、企業はほとんで経営者で決まるということを実感しています。ではどんな経営者が優れているかというと、オーナー経営者、若い、明るい、謙虚、カリスマや人望がある、ビジョンが明確、冷徹で粘着質……、ほとんど最後は直感になってしまいますね(笑)。ライザップの子会社が大変なことになってますが、瀬戸社長は、若手の経営者の中ではかなり優秀な一人だと思っています。

  5. 名前:MEANING 投稿日:2017/05/18(木) 23:40:15 ID:4f02ee769 返信

    中期投資と長期投資を分けるのは、PERの重要性とROEの持続性かと思います。
    中期投資はPERを重要視するのに対し、長期投資は比較的PERの重要度は低い。
    僕は5年以上が長期投資で5年未満は長期投資とは言えないと思いますが、それはさておき、3年から5年程度ならビジネスモデル至上主義とは言わないのではないでしょうか。
    また、2年から3年を投資期間とする場合は、次の2年から3年後の業績予想では足りません。必要になるのは次の3年から4年の業績予想になります。

  6. 名前:MEANING 投稿日:2017/05/18(木) 23:46:04 ID:4f02ee769 返信

    あと、中期投資と長期投資を合わせて中長期投資と言うのはちょっと考え方としておかしいと思います。
    中期投資と長期投資は水と油の別物なので、短中期投資と言う言葉はあっても中長期投資と言う言葉はないかなと。
    中期投資でも長期投資でもない投資手法を中長期投資と新たに呼ぶのなら有りでしょうが。
    すぽさんの中期投資の表現は簡潔に表していてとても良いと思います。
    中期投資家はガチガチのファンダメンタル投資家が多いのかもしれませんね。

  7. 名前:すぽ 投稿日:2017/05/19(金) 09:09:16 ID:589fc6ab0 返信

    みなさん、ありがとうございます。
    まだ粗いまとめ方でしたが、皆さんの思考の整理に役立ったのであれば嬉しいですね。
    >ジントニックさん
    捉え方にズレは無いように思いますよ。モヤモヤの部分を言葉にしていただけたら、協力できるかもしれません。
    >インコさん
    私は経営者頼みの投資は行わないことにしています。「分からないものには投資しない」が投資の第一条だと思っているからです。
    例えばソフトバンク社債は個人にも広く売り出されていますが、私は絶対に買いません。
    孫さんの買収案件によっては一気に財務リスクが変化する可能性があるからです。
    優秀な経営者は全員尊敬していますが、投資家としては「経営者は余計なことをするな」という考え方です。
    M&Aもあまり好きではありません。シナジーがあるなら諦めますが、できれば自社株買いなどで私にお金を直接渡して欲しいですね。
    > MEANINGさん
    中期、長期の定義はご容赦下さい。経営でも中期計画は5年ぐらいを指していましたが、最近は3年ぐらいを指すことが増えましたので便宜的に定義したと思ってください。
    「投資期間+2年」はごもっともですね。3年を見通すなら投資期間は1年ぐらいになりそうです。
    強いビジネスモデルは10年持つと思っていますが、成長を7年見通すのは難しく、5年ぐらいが限界だと思っています。
    そういう意味では「5年で2倍の業績を見通し、3年後の株価を待つ」というのが私の投資スタイルなのかもしれませんね。

  8. 名前:田舎の司法書士 投稿日:2017/05/19(金) 12:23:04 ID:da74e8a30 返信

    前回議論していてもやもやしていた根本的な考え方の違いがよくわかりました。
    また、こうやって書いていただけると、基礎となる視点が違う場合、どうしても議論がかみ合わないことも理解できます。
    こんご、すぽさんのHPで議論の対象となるのは5年で2倍を目指す、長期投資のみに絞り、たとえば今勢いに乗っている株価は1年で1,5倍を目指すという中期投資の銘柄は議論の対象から外すという考えでよろしいでしょうか?
    あと、私が議論の候補として上げさせていただいているグレイステクノロジーですが、
    長期的なビジネスモデルとしては面白いと思っており、是非議論したいと考えております。
    ただ、私がこの企業に興味を持ち、ビジネスモデルを確認したときからすでに株価が2倍(購入したときではないです、あの時に買っておけばよかった)
    PERも80倍を超えてきており、今の株価から5年で2倍はきついかなと思うようになりました。
    このような場合、議論の候補から外すべきかは、すぽさんの判断にお任せしてよろしいでしょうか?

  9. 名前:ジョーカー 投稿日:2017/05/19(金) 22:51:55 ID:70652de76 返信

    すぽさんの中長期投資の整理分かりやすくて
    感謝です。
    優れた高PER銘柄を5年オーダーの長期目線で買うという投資スタイルは一見ありそうな気がしますが、中期投資と比べると難易度が大分高く、ギャンブル要素を許容する必要があります。
    投資家であれば、アルファベットやアマゾンのような新市場を創造し続けるお化け銘柄を当てて、長期で保有し続けてひと財産築くのが夢ではありますが、現実的にはかなり難しく、中期目線で割安で成長する銘柄を乗り換えていく「すぽさん方式」はかなり合理的な投資戦略ですね。
    とはいえ、高PER&高成長縛りの銘柄での議論をチャレンジ企画としてやってもらえると違う発見もあって面白いと思います。
    散文失礼しました。

  10. 名前:ジントニック 投稿日:2017/05/20(土) 14:52:16 ID:c4bae4518 返信

    お返事ありがとうございます。
    引っかかるのは、財務分析についてです。
    すぽさんは気にしないスタンスですが、他の読者の方はすぽさんの行間を間違って察して誤解している気がします。
    ※※※以下、持論※※※
    結論:財務分析は中期投資よりも長期投資の方が重要。
    その理由は以下の2つです。
    理由①:投資期間が長いほど業績が不調となる可能性が高まる。その時に資産リッチの方が立て直しやすい。
    理由②:財務改善がボーナスになる。
    株式投資では、財務が悪い会社は割安に評価されます。
    成長株は次第に資産リッチとなって財務が改善される→割高に評価される。
    中期投資、長期投資の両方とも影響がありますが、投資期間の短い中期投資の方がリターンへの貢献度は高くなります。
    ※※※持論、以上※※※
    すぽさんは中期と長期でどちらが財務分析が重要か名言していないですが、読者には誤解している方がいらっしゃると思います。

  11. 名前:すぽ 投稿日:2017/05/20(土) 21:03:43 ID:589fc6ab0 返信

    みなさん、ありがとうございます。
    >田舎の司法書士さん
    >すぽさんのHPで議論の対象となるのは5年で2倍を目指す長期投資のみに絞り、
    >たとえば今勢いに乗っている株価は1年で1,5倍を目指すという
    >中期投資の銘柄は議論の対象から外すという考えでよろしいでしょうか?
    いや、そういうつもりはありません。
    記事の通り、両面から確認していくことには意味があると思っていますし、
    今回整理ができたことで今後の議論はうまく進めることも可能だと思っています。
    グレイステクノロジーについてはまだ何も見ていませんが、議論前ぐらいにどうするか確認しましょうか。
    高い評価がつくことが重要ではなく、どういうビジネスなのか理解を深めることに意味があると思っていますよ。
    >ジョーカーさん
    AlphabetやAmazonのような企業は私も探したいですね。
    「世の中にとって当たり前の企業」になっていくような会社で、昔の日本株ではセブンイレブンとかでしょうか。
    見つけたらぜひ教えてください(目はマジ)
    >ジントニックさん
    仰る通り財務分析は中期/長期のどちらにとっても重要だと思いますが、
    私の場合「財務ありき」ではなく「まずビジネスありき」で考えているところはあると思います。
    ROEも結果指標なのであまり関心がありません。
    「資本があまり要らず、利益が出るビジネスならきっと高ROEだろうね」
    これぐらいの粗さで捉えています。
    参考:ROEは分析の役に立たない
    http://www.spotoushi.net/archives/42361826.html

  12. 名前:のんびりや 投稿日:2017/05/21(日) 23:34:58 ID:6b93563a3 返信

    すぽさん
    中、長期のまとめ、非常にわかりやすくて感謝します。
    特に、長期が「環境の理解」というのは非常にしっくりきました。
    ①現在の状況の認識を基本として、
    ②どのようなニーズが育ちつつあるか、または生まれると予測されるかを検討し、
    ③それに答えられるビジネスモデルがあるか、または生まれる下地があるかを選別する
    私はこれを長期投資先を考える上での選定基準としていましたが、これが「環境の理解」だと捉えさせて頂きました。
    なお、競争は上記に入れておらず、リスク要因として発生時に内容を勘案して身の振り方を考えれば良いと考えていました(笑)
    そういう意味でリスクマネジメントは全然弱いなと痛感しております。
    今後も皆様と共に勉強させて頂ければと思います。
    よろしくお願いいたします。