フーマフレッシュ~近未来のスーパー

令和最初の記事です。ツイッターで何回かつぶやきましたが、中国のフーマフレッシュ(
盒馬鮮生)というスーパーがずっと気になっています。フーマフレッシュは日本では掛け声だけに終わっている「ネットとスーパーの融合」という未来を現実のものにしている企業です。

フーマフレッシュとは
フーマフレッシュは中国アリババ傘下の企業でニューリテール(新小売)というコンセプトで急成長しているスーパーマーケットです。創業からわずか約3年で現在109店舗(2019年1月)まで拡大しています。フーマフレッシュの最大のコンセプトはなんといっても

・店舗でもネットでも購入できて、店舗3km圏内であれば30分以内で無料配送

で、顧客の基本行動を「店舗で探して購入する」から「ネットで購入する」に変化させています。フーマフレッシュについては詳しい記事/動画がありますのでぜひ読んでみてください。
  • 面積あたりの売上3.7倍。宅配売上50%超。アリババ「フーマフレッシュ」の秘密
  • 新小売スーパーの主戦場は広州。フーマフレッシュが圧倒的に強い理由



今のスーパーが更に便利になったら
日本でもネットスーパー、オムニチャネル、O2O(オンラインtoオフライン)といった言葉だけは耳にしますが、実際の変化は起きていません。注文しても夕方まで届かないしだったらスーパーに出向いた方がいいやという状況だからです。
これは、iPadが出るまでの2000年代のタブレットPCのようなもので「タブレットが便利」というコンセプトは掲げるものの、実際の商品はその良さを提供できていない状況にあるということです。
ただ「ビジネスはお客さんにどんどん近づく」という記事に書いたように、サービスがより便利な方向に動くというのは必定で、結局はこのサービスをどこが実現するのかの問題だということです。

死線を超えたビジネスモデル
詳細記事にもありますが、中国では多くの競合が生まれましたがまともに黒字を出せているのはフーマフレッシュだけです。スーパーは安売り競争を余儀なくされる業態ですので、単純に「30分以内の配送無料サービス」を追加しようすると黒字は望めなくなります。
フーマフレッシュは単純にサービスを追加しているのではなく、

・会員制にして電子決済、スマホ購入を基本にする
・店舗内に商品ピックアップシステムを組み込む
・大量仕入れ&高品質PBを増やし粗利を生み出す

といった「リアルとネットの融合」という戦略に基づいて店舗&ビジネスモデルを設計しており、これによって新たなサービスを追加した上で黒字を可能にしています。
記事の中で一番驚いたのは、フーマフレッシュ開店当初はネット売上比率は10%程度だったものが、しばらく経つと50%を超えるようになることです。フーマフレッシュは顧客の行動を変えることでビジネスを成立させニューリテールを実現しているのです。 現在はフーマフレッシュの配達圏内だと地価が上がる「フーマ区」なんていう言葉があるほどの人気になっているようです。

今後日本ではどうなる
ビジネスはお客さんに近づくものですので、フーマフレッシュのような世界が日本にもやってくるのは間違いないものの、

・配達員の確保
・経営者の覚悟

という大きな課題があるため今後5年ぐらいは実現される予感はしません。もしあるとすれば、ソフトバンクが全力でやってくるか、アマゾンがPrimeNowをリニューアルしてくるかぐらいではないでしょうか。

ちなみに投資対象として考えるならアリババ(BABA)になりますが、あまりに大きな企業のためフーマフレッシュの業績寄与を期待した投資はできません。(アリババ自体は良い投資対象だとは思いますが。)

というわけで、近未来のスーパー「フーマフレッシュ」は、覚えておいて損はありません!

『フーマフレッシュ~近未来のスーパー』へのコメント

  1. 名前:日吉っ子 投稿日:2019/05/09(木) 15:06:22 ID:c744353d5 返信

    残念ながら、外国は、日本よりも劣ってる事が多い。
    だから、外国で成功=日本で成功という発想をすると、間違う。 
    日本のスーパーの基本戦略は、毎週チラシを配り、原価割れの特売品で、店舗に来てもらって、他の商品を買ってもらう。
    客の行動パターンも、スーパーの場合は、まず値段で買う物を決めている。 
    では、そのスーパーに行かずに、ネットで注文できるなら、客はどうするでしょう?
    当然、チラシ掲載の特売の品だけが売れてしまう。店舗のように全商品をネットでザッと見回す事はできないからです。
    どうしてビジネスが成立するのか、疑問です。
    私の予想ですが、外国には、スーパーに原価割れの価格で販売してる商品は、殆どないのでは?
    世界中で成功してるウォルマートは、everydaylowprice戦略で、チラシをまきません。
    西友を買収して、その戦略をしたが、日本では失敗しました。
    日本では、ウエルシアが成功してます。利益は薬局で出して、スーパーでは利益を出さない小売りが成功するのが日本です。
    原価以上の高い商品を喜んで買う馬鹿は、日本にはいないのです。付加価値がなければ、原価より高い物は買わない。
    30分で届く事が、付加価値なのかは、人によるので、否定はしませんよ。
    ただ、amazon成功の秘密という教科書の一頁目に書くなら、ロングテール戦略です。
    滅多に売れない物も揃える事で、他で探し出しにくい物が簡単に買える事が消費者に受けた、というのは、常識です。
    宅配が便利だから、成功したのではない。

  2. 名前:すぽ 投稿日:2019/05/10(金) 00:21:23 ID:589fc6ab0 返信

    日吉っ子さん、コメントありがとうございます
    日本のスーパーは世界の中で難易度が高いというのは同意見です。
    日本はロープライスだけではなく、生鮮食品の品質や惣菜のレベル、活気など様々な要素が求められるため、海外と同じやり方でと進めようとすると失敗します。
    ただ、原価割れでお客を呼び込んで他で稼ぐというやり方だけが生き残るというのは意見が異なります。地元のオーケーストアは「EveryDay LowPrice、高品質」という看板を掲げて、他店より安い品は積極的に値下げしますが、一方で「この商品は原価割れになるので、そういう特売はしません」としています。それでも他のスーパーを駆逐し、地元はオーケーストアだらけになっています。
    そもそもお客さんは原価は気にしておらず、価格・サービスを比較しているだけですよね。
    また、中国のスーパー事情も以下のような点から日本に近い印象を持っています。
    ・値下げ合戦で潰れるのが当たり前
    ・生鮮食品にこだわりが強い
    ==
    フーマフレッシュは「新小売」と掲げている通りネットスーパーではありません。やや高級なスーパーが30分で配達してくれるだけですのでロングテール要素はありません。それでも大人気になっています。
    中国では配達に特化したコーヒーショップ「ラッキンコーヒー」も躍進していますが、「スマホからの配達依頼」というのは大多数が望む次世代のニーズだというのが僕の見方ですね。
    http://tamakino.hatenablog.com/entry/2019/01/09/080000

  3. 名前:MEANING 投稿日:2019/05/12(日) 14:42:55 ID:923a4dc8e 返信

    日本でもネットスーパーはどんどん広がっていくと思いますよ。
    店頭と同じ価格で送料手数料なしで当日指定時間に配達してくれる所便利です。
    飲み物のような重たいものやトイレットペーパーのようなかさばるものはネットスーパーで買えばいい。今後は生鮮食品をネットスーパーで買う人もどんどん増えてくると思います。
    子供のオムツとか便利です。

  4. 名前:さびどめ 投稿日:2019/05/14(火) 01:09:03 ID:d955f9cac 返信

    すぽさん、こんばんは。久しぶりにコメントします。
    本件の鍵は、
    「ネットスーパー・配達・価格・価値」
    という点より
    「キャッシュレス・スマホ決済」
    のように自分には思えます。
    キャッシュレスが広く浸透していることが
    フーマフレッシュ的ビジネスの成功に必要なのではないかと。
    なので現時点での日本ではそのビジネスモデルは難しいのではないか。
    そして日本が現金主義からキャッシュレス化するのには
    相当な時間(10-30年程)が必要ではないかと思います。
    通貨もその姿を変えるし、
    それは軽ければ軽い程良く、小さければ小さい程良い、と私は思うのですが。
    世界ではフーマフレッシュ的なものが主流になっているのに日本でだけは普及していない、というような未来になる可能性もあり得ると思います。
    そしてもしそうなったらその時外国人から日本は
    「未だに物質的に物々交換をしている国」と認識され、
    「旧世紀の遺物を体感できる希有な場所」として観光地化しませんかね?
    現代に話を戻します。
    医療・介護業界に身を置く私が知ることは、
    多くの高齢者はヒマで孤独、ということです。
    そして、ヒマで他に行くあてがないから通う病院で医者に
    「健康のために家に閉じこもらず外に出なさい」
    と言われるんです。なので
    人口のボリュームゾーンが高齢世代で
    その世代の健康意識が高いor経済的に貧しい、場合
    通販の優位性は「重量物」ぐらいではないかと。
    ヒマで孤独なので、店舗や交通機関内でそれらの店員・職員等に良くも悪くもコミュニケーションを取りたがります。
    上述のキャッシュレス化の普及とは異なる論点ですが、
    自分の時間の消費先を求めている人々には
    「手間」というもの(過程)が価値になる、という点はあると思います。
    そのようなことをどう評価するかは人それぞれでしょうけれど。
    議論をするのは楽しいですね。
    ありがとうございました。

  5. 名前:すぽ 投稿日:2019/05/14(火) 12:29:33 ID:589fc6ab0 返信

    meaningさん、さびどめさん、ありがとうございます。
    さびどめさんが仰るように、日本での普及においては「高齢者が多い」ということがポイントになりそうですね。
    僕の親もスマホはおろか携帯電話も持っていませんし、散歩ついでに買い物をしている感じですのでネット利用は全く望めないでしょうね。
    フーマ区の記事に「フーマフレッシュは高収入の人が多く住み、EC利用も活発な地域から広がっている」と書かれていましたが、中国でも高齢者が多いところは参入難しいのかもしれませんね。
    http://tamakino.hatenablog.com/entry/2019/04/18/080000
    日本でいうと成城石井のような高級スーパーあたりがイメージに近いのかもしれません。日本ではどういった動きになるのか観察していきたいですね。