食料品銘柄が安定している理由

楽しい2日間でしたがそこには触れず以前から書こうと思っていた記事をアップします。

食料品銘柄は業績が安定している印象があると思います。例えばコカコーラはバフェットの終身銘柄として有名です。またカップラーメンを発明した日清食品は日本では盤石のNo.1です(その一方で海外進出が遅れたことで苦労しています)。食料品市場は先行者有利という面があります。
この理由の一つが「販売チャネル(の構築)」なのは間違いありませんが、私はそれ以上に大きい要因は「食べ物は好みが固定しやすい構造をもっていること」だと考えています。

お腹が減った時の思考パターン

具体的な話になりますが、お腹が減ってから食べ物を買う(食べる)までには、人は通常の以下のようなステップを踏むと思います。

①ご飯を食べたいと感じる
②食べ物の味を想起する(ラーメン?そば?牛丼?カレー?)
③買う(例えばラーメン屋さんに行く)

スーパーで食べ物を買うときもに似たような流れです。

①食べ物を色々眺める
②食べ物の味を想起する
③欲しいと思ったものを買う

ここで注目したいのは②の「想起」のところです。食料品は買う人には「味を想起する」というステップがあり、この想起に入れると選ばれる可能性が格段に上がります。(逆に、ここに入れないと買ってもらうのに苦労します)
カップヌードルは日本人の想起対象から外れることはおそらくないため磐石ですが、海外によってはその想起がマルちゃんになっているところもあるということです。食料品はこの「一人ひとりの想起プロセス」によって勝ち負けが固定化しやすいのです。

実はブランドの話
実はこれはブランドの話です。過去にコメント欄で以下のようなことを書きましたが、ブランドの本質は一人ひとりの頭の中の刻印です。食料品は他の商品より購入頻度が高く、想起プロセスを多く繰り返すためブランド力が強く影響を与える商品なのです。

ブランドの語源は牛の刻印だと言われています。バッグにコーチの焼印を入れる。これがブランドです。ただよく考えると焼印が打たれるのはバッグではなく、一人ひとりの心の中と考えた方が実態に近いと思います。

・あの商品は高いが高品質
・あのスーパーは安くてよい品がある
・あの監督の映画は面白い

こういう一人ひとりの商品に対する心の中の刻印がブランドです。ですので一般に言われる「ブランド=高く売れる」というのはちょっとズレていて、低価格ブランドも当然ありますし、商品や企業イメージ伝えるマーケティングコストを省けるというのがブランドの主機能だと思います。
(参考)実はNo.1しか選んでいない
http://www.spotoushi.net/archives/42361853.html

投資対象として
食料品株は歴史が長い企業(大人の体格の企業)が多く利益率が地味なので、私の投資対象になりづらいというのが現状ですが、クラフトビールや、高齢者向けの人気食など成長が見込める食べ物が見つかれば面白そうです。

というわけで「人はお腹が空くと食べ物を思い浮かべるので、食料品株は安定する」というおはなしでした。

『食料品銘柄が安定している理由』へのコメント

  1. 名前:veta 投稿日:2016/11/11(金) 19:45:29 ID:d77d1efb7 返信

    すぽさん、こんばんは。
    いつも楽しく拝見させて頂いています。
    ブランドのお話で、私はマクドナルドを思い出しました。
    子供の頃(25年前)、両親が日曜の昼に買ってくるハンバーガーは間違いなくご馳走でした。
    ポテトやマックシェイクなども、当時としてはクオリティーが高かったと思います。
    今もお腹がすくと頭には浮かぶのですが、子供に与える食事と考えると足が向きません。
    CMを見ても、テンション高いなとしか思えないですし。
    安心安全に対してもう少しうまい対応ができていれば、しっかりとしたブランドであり続けたと思うと非常に残念です。
    少なくとも、頭には浮かぶので、まだ逆転のチャンスはあると信じたいですね。

  2. 名前:すぽ 投稿日:2016/11/11(金) 21:12:49 ID:589fc6ab0 返信

    vetaさん、ありがとうごさいます。
    vetaさんのコメントを読んで改めて思いましたが、外食と小売型食料品では競争環境が違いそうですね。
    外食→店をどこにでも出せるため競合増加にブレーキがかからない
    小売型→小売店の棚という制限があり、同カテゴリの商品を並べるには限りがある
    人間の短期記憶領域には7つぐらいしか入らないそうですが、つまりある人にとってNo.8まで落ちるとブランド脱落ということです。
    外食ではNo.8になることはよくありそうですが、小売店で7種類以内しからない商品は多そうです。そう考えると小売型の方がよさそうです。

  3. 名前:veta 投稿日:2016/11/12(土) 13:51:24 ID:8484c934e 返信

    すぽさん、コメントありがとうございます。
    小売型は、そこに入れるかという競争は激しいですが、入ってしまえば安定的な売り上げに繋がりそうですね。
    投資対象として考えるなら、
    「糖質制限」、「ブロッコリースプラウトのような栄養食品」、「トランス脂肪酸のような海外では規制が始まっている成分の代替食品」あたりが流されやすく神経質な日本人に受け入れられそうに感じました。
    ただ、新興企業(成長株)でと注文が加わると銘柄選びが難しそうな印象です。
    良い視点を頂きました、ありがとうございます。

  4. 名前:かぷちーの(元KIRIN) 投稿日:2016/11/14(月) 00:14:33 ID:e89729534 返信

    記事中の「想起」についての余談です。
    店側の立場で考えると、お客さんに「想起」して貰える店になることがリピーターやシェア率UPに大きく繋がると思います。
    よく飲食店ではリピーター獲得のためか、次回来店時にサービスするという割引券を配ってますよね。(ラーメン屋のギョーザ券や、丼物チェーンの次回50円引券など)
    これはもちろん割引券があるから次回も行ってみよう、ということになるのですが、この券に引っかかって2回目・3回目と来店するお客さんになると、券がなくても勝手に「想起」してくれてたまには店行ってみよう・・・という上顧客になってくれます。
    1回行っただけだとお腹が減った時に「想起」対象になりにくいので、1回来店されたお客さんをそのまま返さず、割引券を渡して何回も来店させる作戦ですね。
    2回目以降に来店したお客さんは、リピーターになってくれる可能性が非常に高くなるので、割引券を持ってきたお客さんにはどんどんサービスしなさい、っていつか本で読んだような気がします(^^;
    こうやって、「○○ラーメン」という店がお客様の頭の中でブランド化する・・・という訳です。

    すぽさんがおっしゃるとおり、食品は人気が高いですが、その反面で競争も激しく利益率も低いカテゴリー・・・という点は同感です。
    百貨店や総合スーパーでは、上階層の衣料品売場にはあまり人がいないのに、階下の食品売場では人でごった返している光景をよく見かけます。(どちらも食品は集客目的で、本来は利益率の良い上階層の衣料品を販売したいビジネスモデルだと思うのですが)

  5. 名前:すぽ 投稿日:2016/11/14(月) 08:36:48 ID:589fc6ab0 返信

    かぷちーのさん
    お名前変えられたんですね。今後もよろしくお願いします。
    新規顧客を獲得するのは、再購入(リピーター)をつくるのよりも7倍費用がかかると言われています。リピーターづくりは企業活動にとって最も重要なテーマです。
    ポイントカードなんかもその例ですよね。
    食品は競争が激しい一方でブランドは築きやすいという不思議な業界ですね。
    衣料品はかぷちーのさんが仰る通り、大抵のお店がガラガラで土地効率の悪さが目につきます。(その分を高粗利でカバーしている)
    ZOZOが高収益になるのもそこが理由なのかもしれませんね。