書評:千年投資の公理

前回の記事のコメント欄でバイシュウシタインさんから紹介頂いた本です。「成長、ビジネスモデル、割安」の方針のうち、ビジネスモデルについて私が考えていることがほぼ同じトーンで書かれており非常に驚きました。

千年投資の公理 ──売られ過ぎの優良企業を買う
パット・ドーシー
パンローリング株式会社
2014-11-18


ビジネスモデルの重要性に関する主張は同じ
この本でのビジネスモデルの重要性についての主張は以下のようなものです。下が私の記事です。

「堀とは長い時間をかけて構築されてきたビジネス上の構造であり、模倣することは非常に難しい」

ビジネスモデルはお客さんのニーズと密接に繋がって偶発的に生まれます。モデルごとの基本的なニーズがあり、これらのニーズがあるからビジネスモデルが生まれるという関係になっています。Link

「騎手(経営者)ではなく馬(ビジネスモデル)に賭けろ。経営陣も大事だが、堀を持つことの重要性にははるかに及ばない」
経営者、ビジョン、戦略、市場環境、営業力、技術力、コストダウン力、ビジネスモデル・・・

企業の業績に影響を与える要因は山ほどありますが、これらのうち最も重要なのは、①市場環境、②ビジネスモデルだと考えています。Link

「ネットワーク効果は非常に強力。MSオフィスの競合製品「Open Office」は無料でまずまずの出来であるのに関わらずシェアを取ることができない」
「OpenOffice 0円、MS Office 15,000円」
驚くことに多くのお客さんがこの2つの商品を比較し、MS Officeが欲しいと思うのです。プラットフォームの力とは、それほど強力なものなのです。Link

このブログを始めた理由は「私の言いたいことが書かれているのを見かけたことがない」ことだったのですが、この本を読んでいたらもしかしたらブログを始めなかったかもしれません。それぐらい似た主張です。


(ビジネスモデル)4つのパターン
著書では堀が生まれる4つのパターンが紹介されています。どれも詳しく書かれており参考になります。

①無形資産(特許、行政認可など)
②顧客の乗り換えコスト
③ネットワーク効果
(シェアなど独自の優位点による)コストの優位性

私が紹介している「アフタービジネス型」「地域独占型」は書かれていませんね。

「成長」の重要性は書かれていない
ビジネスモデルの捉え方がほぼ同じである一方で、「成長」の重要性やASといった考え方は全く触れられていません。著者はモーニングスターの出身でそこでの分析視点をベースに書かれているため「儲かる企業」に強い関心がある一方で「儲かる株」には関心が薄いのかもしれません。

AS投資の方は少し前の記事で書いた「ウォール街のランダムウォーカー」の方に書かれていますので、この2つを足すと私の投資法になりそうです。

ご興味があればどうぞ。(もしかしたら私のブログで十分かもしれませんが・・・)

『書評:千年投資の公理』へのコメント

  1. 名前:imoekat 投稿日:2016/07/01(金) 09:31:10 ID:550b2f489 返信

    衝動買いしました。
    読むのが楽しみです!

  2. 名前:ぺんぎん 投稿日:2016/07/01(金) 10:31:45 ID:cff0f9acd 返信

     私も衝動買いしました。
    私も書評を読んだだけですが すぽさんの主張そのままなので、自分が迷った時の辞書代わり(今はこのブログを辞書代わりに使ってますが)に使おうと思います。
     最後の成長性の話が書かれていないの件ですが、私も株価が上がるのにはビジネスモデルだけでは弱いと考えています。
     
     この本では経営者よりビジネスモデルを重視しろと書かれていますが。株価のカタリストとして経営者の発信力、推進力そして株主を大切にする姿勢がものをいうと私は考えているので、両方重視するべきだというのが自分の考えです(いつもこの部分ですぽさんと意見が割れるので 非常に興味深い部分だと思ってますが)
     長文になりましたが 良い本をご紹介いただきましてありがとうございます

  3. 名前:バイシュウシタイン 投稿日:2016/07/01(金) 12:48:17 ID:7b321bc75 返信

    地域独占型については、コスト上の優位性の中で細分化されて書かれている規模の優位性の中のニッチ市場が近い考え方かなと思います。
    小さな池の大きな魚でいる方が良いという表現もされておりますが。
    前回記事のコメント欄にもあった新興企業に対する、経営者の影響力についても書かれており、こちらの本では明確に否定されております。
    むしろ新興企業程、ビジネスモデルが大事だとなっております。(感覚とは違いますが)

  4. 名前:すぽさん見習い 投稿日:2016/07/01(金) 23:20:44 ID:16c062a7e 返信

    はじめましてこんにちは。
    この本ちょうど今2回目読み終わったところでした。
    私はてっきり、すぽさんはこの本はもちろんのこと
    その他多くの本を読んだ上でいまの戦略に至ったのだと思っていました。
    特にこの本お読みになってなかったのですね。驚きです。

  5. 名前:すぽ 投稿日:2016/07/03(日) 08:02:20 ID:589fc6ab0 返信

    >imoekatさん
    コメントありがとうございます。そう言っていただくと書評を書いた甲斐があります。楽しく読んでくださいね。
    >ぺんぎんさん
    投資家としてはビジネスモデルを重要視するスタンスですが、一方で経営者(特に創業者)のことは尊敬していますし、経営者の考えを知るのも大好きです。
    ビジネスモデルと経営者の両面で判断するというスタンスは賛成です。この本にも書かれていましたが、概して「経営者への期待が高すぎる」傾向がありますので、そこにツッコミをいれたくなるという感じです。
    >バイシュウシタインさん
    本のご紹介ありがとうございます。
    地域独占型として私が最初に思い浮かべるのは「自動販売機」です。この本ではコスト面にフォーカスして書かれていましたので別物かなぁと判断しました。
    小さい池の大きい魚というのは、ニッチ戦略の要諦ですね。
    >新興企業程、ビジネスモデルが大事だとなっております。(感覚とは違いますが)
    ベンチャーに於いて経営者の資質は極めて重要だと考えていますが、結局は①市場環境(ニーズ)、②ビジネスモデルが潰れずに成長できるポイントだろうというのが私の見方です。
    優秀な経営者でも一回でビジネスを成功させることは稀です。一度失敗したとしても、ビジネスの場所を変え①と②が揃うよう再チャレンジできる力を持っているということだと思います。
    >すぽさん見習いさん
    コメントありがとうございます。
    私の投資法は基本的にマーケティング系の勉強をしながら作ったものなので、投資本はあまり詳しくないんですよね。(「それは知ってる」という本が多いですし・・)
    そんな中で私と同じスタンスの本をあって驚きました。今後もよろしくお願いしますね。