為替はあまり得意ではありませんでしたがこの本のおかげでかなり理解が進みました。オススメです。
詳しい内容はぜひ本を読んで欲しいのですが、ポイントを絞ると以下のような内容です。
- 為替を決めるのは「国力」といった抽象的なものでは全くないし、短中期的(1~10年ぐらい)には「価値(購買力平価)」でもない。短中期的な為替を決めているのは「フロー(売買量)」、長期的(20年ぐらい)には「価値(購買力平価)」
- 「フロー」に影響があるのは、短期的には投機的な売買だが、中期的には貿易収支。例えば、貿易黒字の国は、継続的に外貨が流入する「フロー」があるということなので、通貨高になる。日本は貿易黒字のため、中期的に円高になるのはごく当たり前の現象。
- 2008年頃までの継続的な円安は日本円の金利が低いことによるキャリートレードの動きのせい。投機的な売買による円安のため、信用収縮時にはその巻き戻しが起きる(急激な円高)
表にすると以下のような関係になります。
短期 | 中期 | 長期 | |
~1年 | 3~10年 | 10~20年 | |
株 | フロー | 価値 | 価値 |
為替 | フロー | フロー | 価値 |
私がこの本を読んであらためて思ったのは「株」と「お金」は違うということことです。
お金は基本的に「使う」ために手に入れるものです。例えば日本企業であれば外国でのビジネスで手に入れた外貨を社員の給料や仕入先に支払うために「日本円」にしようとします。この時、為替レートが少しぐらい不利だろうとあまり気にはしません。なぜなら企業は必要に迫られて、つまり「使うため」に「日本円」を買っているからです。
一方、株を「使う」ために手に入れる人はいません。株を買う人はみんな「保存」しています。株式市場は「ある価値を持った品物」について、いくらが妥当なのか毎日市場で品評会を行なっているだけで、値段も気にせずに必要に迫られて株を買う人はいません。
つまり、株式市場は高ければ買わず、安ければ買うという単純な原理で動いているので中期的に「価値」に収斂しますが、為替市場の場合は、メジャープレーヤーが「値段に関係なく買う」という行動原理を持っていて継続的なフローを生み出し続けるため、中期的にもフローなのです。
株式の常識で為替を考えていた私にとって、とても刺激になりました。