「うらやましい」が波を作る

今年はグロース株が軒並み下落しており、他の投資手法への乗り換えを模索する人が増えているようです。投資の世界にはシクリカルや周期と呼ばれるアノマリーがありますが、このアノマリーの原因は、この「あっちが羨ましい」という感情による行動変化のせいではないかと思うようになりました。

バブルがなぜ起こるか
去年ビットコインのバブルをど真ん中で経験したのですが、一番面白いなぁと思ったのはバブルの間は「買った人が勝ち」というのは事実だったということです。時系列で考えてみます。

  • まず、Aさんがビットコインを買いました。これを見ていたBさんCさんDさんが「あんなの危ないだろ」と嫌味を言います。
  • ビットコインが値上がりします。Aさんは「お前らは損したな」といいました。BさんCさんDさんは「いつか下がるだろ」といいました。でもBさんだけは羨ましく思ってちょっとだけ買ってみることにしました。
  • Bさんのようなプレイヤーが増えたため、ビットコインはさらに上がります。AさんとBさんはホクホクです。CさんとDさんは負け惜しみにような気持ちで「バブルじゃないか」といいました。でもCさんはあまりの高騰ぶりに少し買ってみることにしました。
  • Cさんのようなプレイヤーが増えたため、ビットコインはさらに上がります。AさんBさんCさんはニコニコ。Dさんは押し黙るしかありません。ついにDさんもビットコインを買うことにします。
  • しかしDさんのようなプレイヤーはもうあまりいなかったため、これ以上価格が上がることはなく、ついにビットコインの価格は下落をはじめます。
  • AさんBさんはちょっと下がったところで売りましたが、CさんとDさんは買値を下回ってしまったのでプロスペクト理論通り「負けを認めたくない」という気持ちが強くなり、しばらく持ち続けました。
  • プレイヤーの減少とともにビットコインは下がり続け、CさんとDさんもついに諦めて売却しました。
  • ビットコインはもとの価格に戻りました。
少し長い時間軸で見れば「バブルに乗るなんてバカだなぁ」と思えるわけですが、その瞬間で切り取ってみると「買った人が勝ち」というのは事実で、買わなかった人はそのタイミングでは言い返しようが無いわけです。そしてこの事実が新たな参加者を呼び、本質的な価値とは無関係な方向へトレンドを作るのです。
この話はよく見ると色んな所で見かけます。高度成長期の土地神話は数十年続きましたし、最近ではトンピンさんの銘柄なんかでも同じことが起きています。グロース株の下落で他のスタイルに移ろうとする人たちもこの考え方で捉えることができます。

バブルはいつ終わるのだろう
ビットコインは適正価格が全くわからないユニークな商品だったのでよりバブルらしい値動きになりましたが、株などの普通の商品はファンダメンタルとの乖離がブレーキとして作用します。株の場合は参加者の多くがPERなどのファンダ指標をみながら取引していますので、このことがファンダに近づける影響を与えます。つまり、

・参加者の増減(バブル)
・ファンダメンタル(現在と今後の業績見込み)
この二つが混ざりながら価格が形成されていくということです。
またバブルの終わりは、バブルの原因が「うらやましい」なのだとすれば、価格が天井をつけて「うらやましく無くなったところ」ということになります。

逆の場合を考える
バブルとは逆の「下落トレンド」についても考えてみます。基本的にはこのバブルを裏返したような構造になっているわけですが、プロスペクト理論にあるように人間は負けを認めずなかなか売らなくなる性質があるので、バブルのように熱狂ではなくジリジリと参加者が減るようなトレンドになり、恐怖に耐えられなくなって声が上がったあたりが下落の終盤になります。この記事ですね。

「ククク・・今・・退がった・・・!」
ククク - コピー (2)

私はもともとアノマリーの類には関心がないタイプなのですが、「この波はxx年周期で生まれる」といった怪しい話も、「うらやましい」という感情が波を作っていると考えると一定の妥当性がありそうと言えます。(周期まで正しいとは限りませんが・・)

グロース株の今後の行方
これらのことを踏まえてグロース株の今後の行方を考えてみます。正確なタイミングを読むことはもちろん不可能ですが、現状を考えると、

・参加者のジリ減(恐怖で売却や他の手法へ動く)
・ファンダ的な割安感
の両面のせめぎあいになると考えることができます。グロースから逃げ出したい人はまだまだ居そうですので参加者のジリ減が続くのが基本トレンドで、ファンダの力で上昇したところで「やれやれ売り」が続いて、そのあたりで参加者ジリ減トレンドが終わる。という感じでしょうか。
グロース株は、ビットコインの例で言うとCさんかDさんという感じになっていますので、ジタバタするよりも方針を変えずに居続けた方が安値で拾える可能性がありそうですね。

「うらやましい」が波を作る

こんなことを考えて、今年の投資行動を振り返ってみると面白そうですね。

『「うらやましい」が波を作る』へのコメント

  1. 名前:MEANING 投稿日:2018/12/15(土) 08:17:17 ID:1612a9ec7 返信

    まぁ下落相場の入り口ですからね。
    日経平均はまだ年初から6%程度しか下落していないわけです。
    長期チャートを見ると、下落に転じたかどうか、という程度。
    ここからが下落相場の始まりになるかどうか、という感じです。
    全面高相場が長く続きましたから、逆もしかり。
    下落相場では、天井から半値八掛け二割引、になるグロース株も多くなるでしょう。
    増収増益を続けている企業の株価が平気でファンダメンタル無視で売られまくるわけです。
    僕らの株の評価額がここから半分になるかもしれません。
    それを平常心でいられるかどうか、が分かれ道になるかもしれませんね。

  2. 名前:すぽ 投稿日:2018/12/15(土) 12:39:00 ID:589fc6ab0 返信

    MEANINGさん、ありがとうございます。
    グロースは先回りして3割ぐらいは下がった印象で、ピカピカの会社も買える水準になってきました。
    株の儲けの9割は我慢料ですので、平常心で楽しく市場と付き合いましょう。

  3. 名前:マサ 投稿日:2018/12/17(月) 21:54:39 ID:ec786eaf3 返信

    いつも楽しみに拝読させていただいています。
    すぽさんのこの手の記事はとても面白く好きです。
    全然話しはそれますが、水曜日深夜の『天』は面白いですね。
    雑談失礼しました。

  4. 名前:すぽ 投稿日:2018/12/18(火) 10:09:35 ID:589fc6ab0 返信

    マサさん、ありがとうございます。
    天のドラマが始まってたんですね。チェックしそびれていました。
    有料ですが過去放送が見れるようなので見てみることにします。
    情報ありがとうございます!

  5. 名前:これからどうなる 投稿日:2018/12/24(月) 07:34:40 ID:ed4433e6e 返信

    いつも参考にさせていただいています。
    私が懸念している事、今の世界株価は世界的超金融緩和の結果であり、緩和は終わろうとしています。
    今一番景気が良いのは米国ですが、ドル金利が上がる事で世界に金利上昇圧力がかかり実態経済とのギャップが生まれる、通常の自由貿易下では景気の良い米国への輸出で経済は回りますが、米中貿易戦争でこの流れが阻害されて行くことへの不安です。
    原油や銅などの商品市況の下落が世界経済減速をあらわしていると思います。
    すぽさんはどうお考えでしょうか?。

  6. 名前:すぽ 投稿日:2018/12/24(月) 16:30:00 ID:589fc6ab0 返信

    これからどうなるさん、ありがとうございます。
    経済動向は基本的に読みません。FANGが金融緩和のおかげで成長してきたわけではないですよね。
    経済と企業業績はそもそも大した相関がないと思っていますし、逆に相関を無視できるほど成長する企業をどう選ぶかというのが銘柄選定のテーマでもあります。
    アメリカと中国との経済摩擦が景気にプラスとはもちろん思いませんが、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではありませんが、不安の答えをマクロに求めても大きな意味があるようには思えないといつも思っています。