「成長する企業の条件」について

成長する企業の条件を、深く、多面的に考えようとする人がいますが、私は基本的に「市場環境」だけに注目すればよいと思っています。
一般に「企業の成長」と「企業の実力」は強い因果関係があるように思われていますが、邱永漢さんも仰られている通り、企業の成長にとっては、企業の力よりも市場環境の方が遥かに重要です。お金の川の流れが変化する中で魚をとるためには、竿の優秀さよりもどこで釣るかの方が大切なのです。

感覚的に言うなら、成長の条件は「市場環境8」:「経営者2」です。ユニクロやJINSなど、市場環境が悪くてもその中で自ら市場を創りだし成長する企業は確かにありますしその株を探すのはロマンがあります。
しかし現実には、この成長を事前に見抜くのは極めて困難で、ほとんどの場合高値になってしまっています。株価が上がって、話題になり、自分の耳に入るというパターンになってしまうのです。
そう考えると、まず成長セグメントに注目してその中で良い企業を探すほうが効率的です。成長セグメントぐらいの幅があると良い意味で玉石混交になっており、良い企業が安く放置されていることも少なくありません。

また成長株といえばフィッシャーですが、フィッシャーも「成長株の重要性」を語っているだけで、「成長株の条件」については大きな示唆はしていません。フィッシャーは業績だけではなく、内部の良し悪しを見ろと言っているだけで、株価が割高になることをどうするかについては語っていません。

フィッシャーの成長株を見抜く15のポイント

  1. その企業は、少なくともあと5~6年の間、企業全体の売り上げを大きく伸ばすに充分な市場が見込める製品またはサービスを有しているか。
  2. その企業の経営者は、現在の人気製品が市場を開拓しつくそうとする時点で、その後も全体の企業売り上げを伸ばしていけるように、新製品や新製法を開発していこうという決意を持っているだろうか。
  3. 研究開発の規模と比較して、どれだけの成果が表れているか。
  4. その企業の営業部門は平均以上の力をもっているか。
  5. その企業は投資に値するだけの利益率を確保しているか。
  6. その企業は利益率を維持し、改善するためになにをしているか。
  7. その企業は良好な労使関係を築いているか。
  8. その企業は管理職の能力を引き出すような環境をつくっているか。
  9. その企業は管理職レベルの優秀な人材が豊富にいるだろうか。
  10. その企業は、しっかりとしたコスト分析と財務管理を行っているか。
  11. その企業は、他社との競争を勝ち抜くために企業運営の面で必要な業界特有のスキルを充分に備えているか。
  12. その企業は収益に関して長期的な展望をもっているか。
  13. 近々その企業は成長のために増資をする必要がないかどうか。その増資にともなう株数の増加によって現在の株主の利益を大きく損なう恐れはないだろうか。
  14. その企業の経営者は事業が順調な時には投資家に気軽に口を開くのに、困難な状況に陥ったり市場の期待を裏切るような出来事が起こったりすると、貝のように口を閉ざしたりはしないだろうか。
  15. その企業の経営者はほんとうに誠実だろうか。

フィッシャーさんの15のポイントはその通りだとは思いますが、一般の投資家が社内の細かい情報まで分析できる訳がありませんし、必要もありません。

私は、株式投資においては影響が大きいファクターさえ押さえれば十分だと考えています。「成長≒市場環境の良さ」「ビジネスモデル」「割安」、この3つさえ押さえれば中期的に大きく失敗することはありません