ククク・・今・・退がった・・・!

題名はカイジやアカギで有名な福本伸行さんの作品「銀と金(6巻)」でのセリフです。(ちなみに私は福本先生のファンでこの作品が一番好きです)

ククク - コピー (2)

森田という若者(主役)が、誠京財閥の蔵前会長と特殊ルールの麻雀勝負しているシーン。一枚ツモるごとに100万円の供託金(勝ったほうがもらえる)を支払っていくルールです。

供託金レートは各々が倍々であげることができ、ある局でチャンスと見た蔵前会長が倍々でレートを上げていきます。
100万円の供託金が気づくと1億2,800万円に・・・森田はまだ我慢します。
さらに上がり続けるレート。2億5,600万円、5億1,200億円、10億2,400万円・・・・森田は目がくらむ思いで供託金を支払い続けます。
そして20億4,800万円。「もう無理だ」と森田の目の色が変わったのを見て、蔵前会長が嬉しそうにこう言うのです。
「ククク・・今・・退がった・・・!森田特有の強気の気配が消えたぞ。」
マンガではここから蔵前会長のペースに巻き込まれ大敗を喫します。
切れる瞬間
このシーンは大学生の頃に読んで未だに心に刻まれているのですが、株式投資でもよくある心の動きだと思います。
株価が下がり購入単価を下回ると、まずはプロスペクト理論どおり「売りたくない」気持ちが強まります。しかしさらに下がっていくと「勘弁してくれ」→「もう勘弁してくれ」→「売却」と切れる瞬間が生まれます。気持ちが折れ、売却理由をひねり出し、逃げ出すように売却してしまうのです。
ですが多くの場合そのあたりが株価の底だったりします。逃げ出したい気持ちの人が市場から一掃したら、次は買いたい人の売買フェーズということなのでしょう。まるで蔵前会長の笑い声が聞こえてくるようです。
強い感情には強い合理性を
私は株価の波を読まないことにしていますので、この話を使って一山当てようとというつもりは全くありません。ただ自分を含めた人間の感情のクセを知っておくことは冷静な投資を行うために役立ちます。リーマンショックを思い出すと、毎日下がる株価を眺めながら私は会社業績を何度も確認していました。「それでも企業は儲け続けている」そんな事を自分に言い聞かせながら冷静さを維持していました。リーマンショックのような下落時に生まれる強い感情を鎮めるには、それ以上の強い合理性が必要です。下落時に泥縄式に理論を積み重ねようとしても感情が入り込んでしまいますので、購入時点にどれだけ自信が持てるかが勝負であり、特に強固なビジネスモデルがあるとより安心感が強まります。
というわけで、株価下落時には「蔵前会長にクククと笑われるような売却」になっていないか注意しましょう。
そして「銀と金」は投資家必読の名著ですので読んだ事がない方はぜひ。


『ククク・・今・・退がった・・・!』へのコメント

  1. 名前:えびす 投稿日:2016/04/19(火) 19:50:54 ID:9b14f41e8 返信

    こんばんは。すぽさんブログで福本作品はまさかでした・・・
    パニック売りは、福本作品の中だったら、カモの典型的な行動になりますね。
    そのような時は、評論家・アナリストたちが総弱気だったり、煽るようなことを言ったりしますので、余計そのような行動を取りがちですが。
    冷静に考えればそのような総弱気の時とは、むしろ絶好の買い時なのですが、実際流れに逆らって買うとなるとなかなか難しいものです。理より感情が勝ってしまうんですよね。
    そのためにも「強い感情には強い合理性を」ということになるわけですが、この感情に流されないほどの強い合理性を持つに至るまでがまた難しいのですよね。分析に自信がないと、つい自分の判断が間違ってるのではと考えてしまいがちです。実際のところは、市場の方がしばしば間違えているわけですが。
    ちなみに福本作品、画が個性的すぎますが(すぐ慣れます)、どれもストーリーがいいので結構はまりますよね。普通に娯楽作品としても十分楽しめると思います。銀と金も内容を少し忘れてしまったので後で読み返してみようと思います。
    今回は福本作品が載ってたので、つい勢いで投稿してしまいました。

  2. 名前:imoekat 投稿日:2016/04/19(火) 19:59:37 ID:ffd08c3e0 返信

    すぽさん
    こんばんは
    「銀と金」
    立ち読みで中学くらいの時に読んで面白い!と思って後日探しましたが見つからず…今、Kindleで持っています。
    福本さんの作品はどれも面白いんですが、この銀と金が一番スケールが大きく賭けのバリエーションも多彩で好きですねー。仰る通り投資をするなら読んでいて損はないですね

  3. 名前:佐藤鈴木 投稿日:2016/04/19(火) 22:43:39 ID:1402a8604 返信

    打ちきりとは知らずに競馬回のあとの巻を探しに行った覚えがありますw

  4. 名前:まんぼう=ふんばり 投稿日:2016/04/20(水) 00:03:01 ID:610721d73 返信

    お久しぶりです。まんぼうです。(自分のブログではHN=ふんばりなので併記)
    福本漫画は名セリフ多いですよね。銀と金は未完の傑作ですよね!あと天やカイジも名作だとおもいます。(アカギはまだ鷲巣麻雀が続いてるんで辟易してるんですが)
    僕も大学時代に「絵の拒否感は逆にハマる」と福本漫画を全部勧められて読んだ派です
    含み損、僕はその時点で「今買いたいかどうか」を基準にしてます。信用売りもやるので「売りたい」=売ればいいとわかり、呪縛から解放されてトレードがずいぶん楽になりました
    一番困るのはポジションをとっているのによくわからない時で、結論としては「よくわからない形になることを避ける」ように工夫してます。すぽさんの「購入時点にどれだけ自信が持てるかが勝負」であってこの部分はロジックの組み立ては多少違えど似た種類の投資家なんだなぁと同調してしまいます
    僕は波を見る派&中期投資なのでレンジ相場という見立て=底は取れないので段階的にポジションを取りにいく戦略ですね。

  5. 名前:すぽ 投稿日:2016/04/20(水) 00:30:00 ID:acca04817 返信

    みなさんありがとうございます。
    「銀と金」を読まれている方が意外と多くて嬉しいですね。
    >えびすさん
    アナリストが総弱気、本当にそうですね。雑誌なんかも下落が決定的になるとこの世の終わりのように煽りがちです。
    「それでも企業は儲け続けている」
    黒字の会社が下落し続けることはありません。
    >imoekatさん
    「銀と金」は福本さんの初期衝動というか、売れる前の「こんな面白い漫画を描けるんだぜ」という情熱を感じる作品ですよね。
    私はkindleで出る前に、家の銀と金を「自炊(最近言わない?)」してPDFにしました。
    >佐藤鈴木さん
    ええ。12巻はいつ出るのでしょうか。20年待っています。とりあえずアカギの鷲巣戦を終わらせて欲しいですね。
    >まんぼう=ふんばりさん
    私も天とアカギはもちろん全巻・・・アカギは途中で止まっていました(笑)
    ファンダメンタルをベースに市場との差をとっていくという意味では同じなんでしょうね。私よりも柔軟性が高いのでより高度な面もありそうです。

  6. 名前:燕吉 投稿日:2016/04/20(水) 11:32:27 ID:0e9db02fe 返信

    「銀と金」
    すぽさんの愛読書だったんですね。
    たしかに福本さんの作品は人間の本質である欲望と恐怖をテーマにしている点において相場判断と共通ですね!
    長期投資・ビジネスモデル投資ながらも、市場に参加する心理は前提として考えておかなければならない。
    そして、その熱狂と恐怖の渦中にあっても常に自分自身を客観的に見れる目線の必要性。
    感情と理性。
    バランス感覚の優れた
    すぽさんの奥の深さと守備範囲の広さにあらためて脱帽です!

  7. 名前:すぽ 投稿日:2016/04/20(水) 23:53:08 ID:acca04817 返信

    燕吉さん、ありがとうございます。
    そ、そんなに褒めていただいても株価は上がりませんが・・・
    株価はもっと理性的でありそうなものですが驚くほど感情的ですよね。理性的な投資はその分有利と言えそうです。