はじめてのソシャゲ課金

そーせいで盛り上がった後ですが柔らかめの記事です。

子供の影響で「妖怪ウォッチぷにぷに」というソーシャルゲームを始めました。無料で進めるつもりでしたが結局15,000円も課金をしてしまいました(しかも目当ての妖怪はゲットできず)。悔しさとこのビジネスモデルをつくった人への尊敬の念を込めて、ソーシャルゲーム(ソシャゲ)のビジネスモデルを分析します。 

ソシャゲを外から見ている人たちの目は常に冷ややかです。客観的に見ればプログラム上のフラグを0から1に書きかえることに対し10,000円を支払うことに合理性がないのは明白だからです。しかしソシャゲは人間の持つ感情や性質を最大限に活用することで「非合理的な行動」をとるように仕向けています。キーワードは次の3つです。
①ゲーミフィケーション
②サンクコスト
③ガチャ(射幸心)

①ゲーミフィケーション
ゲームの本質とは「頑張る→ご褒美の繰り返し」による興奮の連鎖です。皆さんがやったことのあるゲームを思い浮かべてもらうと、ゲームを始めると、少し頑張る・時間をかけたところで、新しいステージができるようになる/褒められる/自分が強くなるなどの「ご褒美」がもらえます。そして、その先にはさらなるチャレンジが待っており、そしてこれをクリアするとまたご褒美がもらえる、、この繰り返しとなるように設計されています。良いゲームはこの「頑張る→ご褒美」のバランスが非常にうまく作られており、クソゲーと呼ばれるゲームは、いくら頑張ってもご褒美がもらえない、頑張る必要もないぐらい簡単などバランスが崩れています。(もちろん画像の美しさやストーリーなどもゲームの満足感に影響を与えますが、それは映画的な要素であり、ゲームの本質ではありません。)近年はこのゲームの仕組みを使って社会活動に応用することをゲーミフィケーションと呼び注目を浴びています。

妖怪ウォッチぷにぷにを含めた今のソシャゲはこの「ゲームの本質」に忠実です。玉を指でつなぐ、弾くなど、子供でもできるような非常に簡単なゲームをベースにして、絶え間なくご褒美が与えられるよう設計しています。こうして「どうでも良いことを、楽しく価値があると感じる」という非合理な感覚を生じさせています。

②サンクコスト
サンクコストとは「戻ってこない損(を取り返そうとする心理)」を表す言葉です。ドラクエなどをやったことがある人はわかると思いますが、ゲームをやめるタイミングは基本的に「クリアした時」や「アイテムをコンプリートした時」です。これはレベル40まで上げてしまって途中で終えることに対して「もったいない」という心理が強く働くからです。ここまでやったら最後までやろう。ここまでやったら全てコンプしよう。人間は自分の努力を無駄にするのがとても嫌なのです。

妖怪ウォッチぷにぷにを含めた最近のソシャゲは、無料でできる範囲が驚くほど広く設計されており「コンプリートは出来ない」というところまで無料でできます。ドラクエで言えばレベル40まで、中ボスを倒したところまで無料で連れてくるのです。そしてあなたにこう囁きます。「ここからは有料じゃないと先には進みづらいですよ」

③ガチャ(射幸心)
そしてソシャゲの仕上げの仕掛けは、有名な「ガチャ」です。
人間の本能に射幸心と呼ばれる「偶然の幸せを望む気持ち」があります。バクチはこの射幸心にマッチしており、度が過ぎると身を滅ぼす危険すらあります。このため多くの国で法律でバクチを規制しています。

ソシャゲにある「ガチャ」とは要するに世の中にある「ガチャガチャ」をゲームにしたもので、考え方はバクチそのものです。ただしお金が戻ってくるわけではないため法的には問題ありません。妖怪ウォッチぷにぷにのガチャの場合、1回300円~500円、10回に1回ぐらい中当たりぐらいのアイテム(妖怪)が入っているぐらいで設計されています(本当の確率は教えてもらえません)。つまり中当たりで5,000円、コンプリートを目指すなら最低10万円は覚悟しなければなりません。

「ゲームの本質に立脚し、広い間口でサンクコストを積み上げさせ、射幸心を煽るガチャを用意」
このように、今のソシャゲは非合理な行動を取る仕掛けを何重にも積み重ねて幻想をつくりあげているのです。

こうして客観的に語ると、そんなものに引っかかる人はいないと感じるのですが、支払った瞬間は「自分にとっては合理的判断だった」のですからこの力には舌を巻くしかありません。ちなみにソシャゲの世界から抜ける単純な方法は1つで「しばらくやらない」ことです。忘却曲線とともに、ゲームによる興奮もサンクコストも時間が忘れさせてくれます。
投資対象として
グリー、DeNAから始まったソシャゲは「爆発的に儲かる」ということで投資家から注目を浴び続けています。ここでまとめたように人間の心理を巧みについた課金システムは非常に優秀であり、株主に大きな利益を与えてくれます。しかしながら、ゲームは「飽きる」という最大の弱点があり、継続した利益は保証できません。ですので中長期投資には当然向きませんし、高値で買って致命的な損失を被るリスクも内包しています。

ゲームとどう向き合うか
私はゲームは好きですし、人間から「楽しい」という感情を生み出すゲームは世の中に必要なものだと思います。しかし、ゲームには「幻を生み出す」という強力な力があり、ゲームを作る側に慎重な使いかたが求められます。
そしてソシャゲのユーザー側は、ゲームを楽しみながらも「自分は幻想を見ているんだ」という客観視と自覚を持つことが必要です。

そうしないと・・・・

やっぱり15,000円の価値は無かったよなぁ~(遠い目)

・・・こうなります。

『はじめてのソシャゲ課金』へのコメント

  1. 名前:まんぼう 投稿日:2016/01/17(日) 13:31:09 ID:d34bb260b 返信

    サンクコストは埋没費用そのものを指す用語で、
    サンクコストの埋没化を防ごうとする認知バイアスをコンコルド効果なんていってみたりしますね。
    すぽさんも書いておられる通りこのコストの大部分は人生に費やした時間のことが多いです。
     
    ぼくもソシャゲをやるのですが(ぷにぷにもやってる(笑))
    お金はかけてないんですが、サンクコスト、つまり費やした時間がかなりあるので
    さらにやめられなくなるという悪循環に陥ってます
    株と同じで損切りは大事だと実感するところです(笑)
     
     さてこのガチャ、モンスターヒットとなったガンホーのパズドラは、ガチャは緩く
    無課金でもパズル能力を鍛えることで最高難度はクリアできます。それに加え+ガチャが緩い。
    強いキャラのバリエーションが豊富で当たりキャラが多いという側面もあります。
    魔法石というゲーム内通貨もバラまいてます。ちなみにぷにぷにもこっち側です
     他方、絞れるだけ絞るという運営もいて、サイゲームスのグラブルとか、スクエニの星のドラゴンクエスト、
    他にもたくさんあるでしょうが、それらは恐ろしいです。完全な装備を揃えるのに100万位余裕でかかるようで
    有名相場師のCISさんという方が1000万円以上課金して話題になったこともあります。
    この手のゲームのガチャは当たりが出る確率が0.3%程度。それを数回引かないと強くなれません
     こういう一般コンシューマーの受忍限度を超えたものはどこかで規制が入るべきですね。
    ガチャ排出率の明確化、法制化、操作できないしくみ、第三者機関が検査するしくみ等々
    パチンコと同レベルの規制をするべきと思います
    結論:パズドラ/ぷにぷに は いいソシャゲー (なんじゃこりゃ)

  2. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/17(日) 15:16:17 ID:bee0e726b 返信

    まんぼうさん、ありがとうございます。
    世の中的にサンクコスト(埋没費用)を広義的に使っている印象がありまとめてしまいました。コンコルド効果は、高速旅客機コンコルドの開発(ここまできたら戻れない)を例にした言葉ですよね。
    ソシャゲは投資家としてその動向に注目しつつも、実際には「釣りスタ」を5分やって以来だったのでその洗練ぶりに驚きました。
    今回改めて印象に残ったのはゲームの力の面白さとそれをどう生かすかということです。
    例えば勉強は「分からない→できた」の繰り返しですが、分からないのところが長いとクソゲーになります。ここにはもう少しゲームの要素(分からないの期間を短くする、ご褒美を増やす)などの工夫が出来るように思います。
    またソシャゲについてはまんぼうさんもおっしゃるように「規制やルール化」が必要なほど危険なものだと思います。例えば20年後にはお酒などと同様の扱いになっているのかもしれないなぁと思います。
    ぷにぷにはyoutubeでエンマ大王を出した動画に影響されてつい使ってしまいました。まんぼうさんは無料で続けていただき、私の課金はまんぼうさんへの間接的なプレゼントになればと思います(^^)

  3. 名前:たける 投稿日:2016/01/18(月) 13:26:54 ID:fc3a6f986 返信

    私もゲーム会社には投資しません。虚業だと考えております。
    しかしながらゲームの出来は素晴らしいし、開発者に敬意を表して1万程度は課金してます。(ゲームソフトを買った気分で)

  4. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/18(月) 17:38:53 ID:357bc7515 返信

    たけるさん、ありがとうございます。
    ソフト屋さんではなくプラットフォーム型になると見方が変わりますが、スマホがプラットフォームになってしまったのでなかなか厳しいですね。
    妖怪ウオッチぷにぷにはよくできていると思いますが3000円ぐらいが適正かなぁという感想です。

  5. 名前:アキラ 投稿日:2016/01/18(月) 18:27:05 ID:0dfd7167b 返信

    すぽさんこんばんゎ。
    エイジアのおかげでこの下落相場助かっております。素晴らしい銘柄に感動してます。

  6. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/18(月) 20:16:41 ID:70a5f6dd9 返信

    アキラさん
    私のおかげではありません。短期の上がり下がりは単なる運ですので、礼には及びませんよ。

  7. 名前:通りすがり 投稿日:2016/01/19(火) 08:48:48 ID:915c32a7c 返信

    いつもブログを拝読させて貰っています。
    コメント等はしませんが、いつも楽しみにしております。
    すぽさんらしく冷静に課金を分析された文章だな、と読み進めて…最後の三行で笑いました。
    あー、すぽさんも人間だったんだな、と(笑)
    市場は2016年の幕開けから大波乱ですが頑張って下さい。

  8. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/19(火) 14:20:36 ID:969745b3b 返信

    通りすがりさん、ありがとうございます。
    柔らかいテーマでしたが楽しんで頂き何よりです。

  9. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/19(火) 14:23:03 ID:969745b3b 返信

    ラーメン屋さん、
    人の一挙一動より、まず自分がどうするかが大切です。ラーメン屋さんはPCデポをどう思いますか?答えて頂けたら回答しますよ。

  10. 名前:ないちゃん 投稿日:2016/01/19(火) 16:24:57 ID:a46a08610 返信

    ゲームは楽しいですが、実社会で負け組の方が重課金して勝ち誇れる場です。ゲーム運営会社には悪意を感じます。
    課金制度は政府がもっと規制すべきかと思います。

  11. 名前:すぽ 投稿日:2016/01/19(火) 17:16:15 ID:969745b3b 返信

    ないちゃんさん、ありがとうございます。
    施策として思いつくのは
    •ガチャの確率開示などの透明性向上
    •課金の上限額規制
    あたりでしょうか。
    法制化はもう少し時間がかかりそうですので、そこまでは自制しかありません。この記事も自制に向けて何かの足しになればと思い書きました。