私はビジネスモデルにこだわった投資をしていますが、その背景には「ちょっとした価格決定権(≒ビジネスモデル)が企業の生死を分ける」という思いがあるからです。
参考:
なぜビジネスモデルを重視するのか①
なぜビジネスモデルを重視するのか②
どんな値付けができるのか、どう価格を維持するのか。Appleの価格コントロール力は、他社のお手本になる興味深いものです。
価格コントロール①:販売チャネル
普通の企業は自社製品を販売してくれる「販売チャネル」を非常に重要視します。企業活動とは、何よりもまず「売上」があり、ここから様々なコストを支払っていくというものですから当たり前です。
このため一般的に、販売チャネルには3割ぐらいのマージンを渡すのですが、Appleの場合はマージンが1割程度の上に、定価販売を守る店以外には卸しません。
(ちなみにiPhoneは、割引分を通信キャリアが全て負担しているため、キャリアの補助金の出し方によって多少変動しています)
こんな大胆な(傲慢な?)事ができるのは、全て商品力にあります。「近くの電気屋に売ってなくても欲しい」と思えるほどの強い商品力をテコにして、他の家電メーカーが頭を下げ、営業応援までさせられている、ヤマダ電機、ヨドバシカメラ、ビックカメラといった大手家電量販店に頭を下げさせているのです。
そして、この価格コントロールによって、消費者がApple商品を買った時に支払う50,000円に対し、普通の企業なら35,000円しか手に入らないところを、45,000円も手に入れているのです。
この差は全て企業の利益になり、営業利益率を2割以上引き上げる要因となります。ただAppleの場合は、全て利益にしているというよりは、価格を下げて価格競争力に使ったり、高い部品に充てたりしていますので、現実は10%~15%程度の引き上げ効果いったところでしょう。
価格コントロール②:メモリ
もう一つの価格コントロールというとラインナップ(メモリ)があります。例えば、私が先日購入した「iPad mini retinaセルラーモデル」のラインナップは以下のとおりです。
- 16GB 55,440円
- 32GB 65,520円
- 64GB 75,600円
- 128GB 85,680円
メモリがちょっと上がると1万円上がり、16GBと128GBでは3万円の差があります。メモリの市場価格は128GBでも1万円程度ですので、アップルは128GBモデルを売ると、16GBモデルよりも粗利が2万円以上多くなります。
16GBモデルを買うお客さんと、128GBモデルを買うお客さんとでは買う意識が違うことを踏まえて、エントリーモデルはNexus7やKindleFireに対抗しつつ、上位モデルで利益を大きく稼ぐという方法を取っています。
ユーザー視点では、メモリが刺さるスロットをつけてくれればいいのですが、これも強い商品力を背景に「スロット無しでも、高くても、他機種より欲しいでしょ?」という価格設定をしています。これも当然利益率向上に大きく寄与します。
②は単純に商品力をいかに価格に転嫁するかという割と一般的な手法ですが、①については「そもそも販売チャネルは、世の中に必要な存在なのか?」という、ネット販売形態が当たり前になっていく時代の中で、チャネルの意味を問うような戦略です。
というわけで、ジョブズさんが亡き今、画期的な商品は作れないのではと色々言われるAppleですが、現状でも末恐ろしい企業です。
(ちなみに前期売上は1,700億ドル≒17兆円もあります)
2124JACリクルートメントを新たに購入みたんですが、ここはどう思われますか?